ある本との出会い
学生時代に本を読み、感想を書かなければならないことが多々ありましたが、そういう時に私は本の前後にあるあらすじを書き写すことでピンチを乗り切ってきました。全く本を読んでいなかったせいで、文章を読むスピードがありえないほど遅く、しかも時間をかけて読んだにも関わらず、著者の主張がさっぱりわかりません。もちろん、国語のテストの点数は散々でした。いくら丁寧に問題文を読み込んでもあの抽象的な問題を解くことは私には不可能に思えました。
そんな私は専門学校へと行き、ある友人と知り合います。その友人が姉と暮らす部屋に入り浸るわけですが、部屋にはなぜか彼が読みそうにもない本が転がっていました。彼と打ち解けた理由はお互いに高校野球をしていたからで、文化的な趣味の一致ではありません。しかも読書嫌いな私の友人ですから、マンガは例外として、彼も本を読んだりしていませんでした。類は友を呼ぶとはこのことです。しかし、彼の母親が読書家だったため、定期的に彼の部屋には母親からの新しいオススメの本が届いていました。
私がちょうどバイトを辞めた時期のことでした。彼がバイト中、彼の部屋で暇を持て余していた私は、その母親推薦の本を読みはじめました。生まれてはじめての自発的な読書体験です。あれは確か、あさのあつこ著「バッテリー」でした。タイトルの通り、野球を通して成長していく主人公とその友人を描く人間ドラマでした。しかも、主人公を応援する病弱な弟の描かれ方が儚くも美しく、主人公の動向よりもそちらが気になり読み進めてしまうような見事な小説でした。
元高校球児の私がこれにハマらないわけもなく、読書経験ゼロにも関わらず、全6巻セットのボリュームをあっという間に読み尽くしてしまったのです。読書のスピードが遅いと悩んでいる方がいましたら、興味のある本を読むことでその悩みは解消されるのでオススメします笑
無限に増える読みたい本
これをキッカケに私は読書にハマります。金持ち父さんシリーズ、ダヴィンチコードから入ったダンブラウンシリーズ、フェルマーの最終定理などのサイモンシンシリーズ、ホーキングの宇宙論、会社経営や株式投資に関する本を山ほど、脳科学の養老孟司、罪と罰から入ったドストエフスキー、村上龍、村上春樹、藤原新也、トマスピンチョン。
1冊読めば10冊ほど読みたい本が増えるのですから、手当たり次第に読めば読むほど、読みたい本は増えていくばかりでした。休日は座り読みできる大型書店や図書館に入り浸るようになり、陽の当たらないアパートの狭い部屋は本で埋め尽くされてしまいました。読めば読むほど知らないことを思い知らされるのでした。
それから10年以上が経ち、今でもやはり本を読む習慣は途絶えていません。今となってはジャンルにこだわることなく、どんな本でも面白そうなものは読んでいます。最近でいうと、現代アートの本や、「死」とは何か? という本を読みました。この、あらゆるすべての事柄に対する知的好奇心の根源は、あのたった1冊の本、友人の母推薦の、あさのあつこ著「バッテリー」だったのです。
つまり、「すべてはひとつ」だということです。
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