土地や建物の登記に関する専門家、土地家屋調査士。具体的には土地の分筆登記や建物の表題登記などを行います。ちなみに登記とは、不動産の所有者などの情報を書類に記載し、法務局で管理することです。その情報があることで、不動産に関する権利を社会に示すことができます。
そんな国民の大切な財産である不動産を管理するために活躍する土地家屋調査士の仕事内容をまとめていきます。そして、この仕事に秘められている可能性も同時に説明します。
土地家屋調査士の一日のスケジュール
8時 出社、測量機材を車に積み、現場に出発
8時半 現場到着、それぞれの現場の進捗状況に合った測量をする。(GNSS測量、基準点測量、境界点の復元・測量、境界標の設置、平面測量、立会いなどなど)
12時 昼食
13時 現場での測量が立て込んでいるときには終日、複数の現場を回って測量を行う。午前中で現場の目処がついた日には昼から事務所に戻り、測量成果をもとに図面を書いたり、登記申請に必要な書類を作ったりします。現場での仕事と、内業の割合はだいたい4:6くらいで、内業のほうが多くなる。ただし、この割合は事務所が扱う案件の違いによって変わってきます。
申請書類が揃った時点で、補助者にも書類に不備がないか確認してもらい、オンラインで法務局に登記申請。見積もりの依頼があれば、同じくオンラインで必要書類を取得しておく。
17時 終業。補助者にはここで帰ってもらうが、明日の準備まで終わらせようと思うと、定時では帰れないことが多い。
18時 隣接地所有者の帰宅時間を狙って立会い依頼の電話。明日、測量予定の現場のデータや資料の準備。
18時半 帰宅
土地家屋調査士は他の士業とは違い、現場での作業があります。梅雨、積雪、台風、真夏の熱中症リスクなど、様々な要因を考慮すると、現場での作業はなるべく早く終わらせておいたほうが無難です。ただし、最近では梅雨の時期が全く予測不能で、1ヶ月近く雨が続くこともザラにありますから、雨の中でも測量できるよう、カッパやトータルステーション用の小さな傘を準備しておくのも重要です。
この現場での作業が辛そうで、土地家屋調査士を敬遠する人もいるかと思いますが、一日中パソコンの前に座っているよりは定期的に体を動かすため、メリハリのある働き方のできる仕事です。精神疾患の予防にもなります。しかもこれから詳しく説明しますが、現場での作業がこの資格を優位にしている大きな要因でもあります。
土地家屋調査士の仕事は大規模法人に奪われない
士業といえば、土地家屋調査士以外にもたくさんの種類があります。
弁護士、司法書士、会計士、税理士、社労士などなど。その中でも特によくテレビのCMなどで目にするのが弁護士です。なぜ、弁護士がコマーシャルを使って宣伝できるのかというと、その仕事の内容に大きな特徴があります。
例えば、過払い金の請求です。過払い金請求とは、払い過ぎた借金の利息を消費者金融などから返してもらう手続きのことです。この請求を代理できるのは、弁護士や司法書士で、平成18年の最高裁の判決により、払い過ぎた利息は借主に返すべきだという判断が下されました。
なぜ、弁護士や司法書士がテレビCMを使ってまでも、全国各地から過払い金請求の仕事がほしいのかは、単純に儲かるからです。
私は弁護士や司法書士ではありませんから詳しくはわかりませんが、あの判決から10年以上たった今でもテレビやラジオで過払い金請求の仕事を募集しているのは、一般的な案件に比べて書類作りなどの手間がかからず、全国各地の仕事を請負うことができ、しかも儲かるということの証拠だと思います。
つまり、田舎の過払い金請求の仕事は、都会の大きな弁護士法人に仕事を奪われているということです。
しかし土地家屋調査士の場合には、そういうことは起こりません。現場で数ヶ月かけて測量をしたり、隣接地所有者の立会いも必要で、その土地の慣習なども絡んでくるため、その土地のことに精通した土地家屋調査士でなければできない仕事だからです。
ということで、土地家屋調査士の仕事は、遠方の同業者に奪われる心配がなく、人口の少ない地方でも、十分に生計を立てることのできる仕事だと言えます。
現場の仕事はAIに奪われない
そして、これからはAI(人工知能)の時代です。たとえ都心の大規模法人に仕事を奪われる心配がないとしても、人工知能に仕事を奪われるかもしれません。
例えば、税理士の仕事がまさにそうですが、会計ソフトの普及で、税理士の報酬も、仕事量も大きく減りました。士業の仕事は基本的には書類を作って提出する仕事ですので、会計ソフトが普及したように、今後士業の書類作りは次々とパソコンのソフトや人工知能に奪われるはずです。
ただし、土地家屋調査士の現場での測量は違います。土地の所有者に境界を確認し、境界標を設置し、書類に印鑑をもらい、測量して図面を作る仕事ですので、これはどれだけ社会が高度化しても人工知能やロボットにできる仕事ではありません。
以上の理由で、土地家屋調査士の仕事は、大規模な法人に奪われる心配も、人工知能やロボットに奪われる心配もない、安定した仕事だと言えます。
まとめ
土地家屋調査士の仕事では、建物の表題登記が仕事の依頼件数も多く、測量にかかる時間も少ないため、開業してすぐの土地家屋調査士に好まれる傾向があります。しかし先ほど説明したように、長期的に見ると「測量」が得意な土地家屋調査士を目指す必要があります。
この記事を閲覧してくださっている人は、土地家屋調査士の仕事に興味を持ってこの記事を検索したわけですから、ぜひ上記のような土地家屋調査士像を思い描いて試験勉強に励んでください。
以上で土地家屋調査士の仕事についての説明と、現場での測量が安定した収益を生む理由の説明を終わります。閲覧ありがとうございました。
土地家屋調査士を目指すために通信講座を検討している人はこの記事を参考にしてみてください。
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