2019年11月11日から不動産登記の原本提示の省略(調査士報告方式)が可能になりました。これまでは、不動産登記をオンラインで申請する際、委任状や工事完了証などの原本を法務局に提出する必要がありました。ですので、申請書や図面だけをオンラインで申請し、委任状や所有権証明書、住所証明書などは法務局に原本を提出する、オンライン申請(特例方式)が主流でした。しかし今後は、原本の提示が免除されたため、完全オンライン申請が主流になりつつあります。
具体的にどう変わったのかをここで解説します。
法務局の方針としても、事務作業の簡略化のため、できるだけオンラインで登記を申請してほしいと以前から推奨していますので、これを機会にぜひ完全オンライン申請に切り替えましょう。
目次
法務省公式サイトと、利用時間について
オンライン申請に関しては、法務省の公式サイトで詳しく説明されています。このブログでは重要なポイントだけをわかりやすく解説していますので、細かい点に関してわからないことがあれば公式サイトで確認してください。電話での対応もしてもらえます。
登記・供託オンライン申請システムの利用時間
月曜日から金曜日までの8時30分から21時まで(国民の祝日・休日,12月29日から1月3日までの年末年始を除く。)
登記の申請の受付時間は,8時30分から17時15分まで。17時15分を過ぎて申請情報が登記・供託オンライン申請システムに送信された場合は,申請情報を送信した日の翌日(翌業務日)に受付がされます。
完全オンライン化のメリットとデメリット
オンライン化によるメリットとデメリットを列挙し、比較してみます。
メリット
- 法務局に書類を提出したり、郵送する必要がない。
- 補正がある場合でも、オンラインで再提出できる。
- 原本還付の書類を作る必要がない。
デメリット
- パソコンが壊れたり、ネット回線がつながらない時に申請できなくなります。(パソコンのバックアップを定期的にとっておきましょう)
- 法務局に行かなくなるので登記官に顔を忘れられるかも(笑)
ざっくりこんな感じです。基本的にはメリットしかありません。
添付書類の作り方
それでは、具体的な書類の作り方を説明します。すでに特例方式(半ライン)で申請をしている人は非常に簡単です。
図面について
図面類はTIFFデータ(またはXML)にして、電子署名をする。電子署名したファイル名にはsigが付きます。同じ図面が複数あるときには「01,02,03」と番号を振りましょう。
例
土地所在図、地積測量図 → sokuryouzu01.tif(.xml)
電子署名入り → sokuryouzu01.tif.sig.xml(.xml.sig.xml)
地役権図面 → tiekiken01.tif(.xml)
電子署名入り → tiekiken01.tif.sig.xml(.xml.sig.xml)
建物図面、各階平面図 → tatemono01.tif(.xml)
電子署名入り → tatemono01.tif.sig.xml(.xml.sig.xml)
その他の添付書類
委任状や住民票、工事完了引渡証明書、建築確認、調査報告書、登記済証、印鑑証明書などは、PDF化して、電子署名をする。ファイル名は図面類と同じように書類名。電子署名後はわかりやすいようにsigをつけてもいいでしょう。日本語表記で例示していますが、アルファベット表記でも大丈夫です。
調査報告書(電子署名済み) → 調査報告書.sig.pdf
工事完了引渡証明書(電子署名済み) → 工事完了引渡証明書.sig.pdf
印鑑証明書付きの書類の場合は、印鑑の大きさが変わらないよう、スキャン時には書類のサイズを等倍にしてください。同じ書類が複数あるときには「01,02,03」と番号を振りましょう。
特例方式の申請時に必要だった「書面により提出した添付情報の内訳表」は不要になります。
電子署名、PDF Readerについて
登記情報提供サービスが提供している電子署名ツール「PDF署名プラグイン」で電子署名の場所を設定できます。
PDFの閲覧や編集にはAdobe Acrobat DCが推奨されています。以前は買い切りのライセンスでしたが、数年前からAdobe製品は毎年更新するタイプのライセンスしか販売しなくなりました。年に18,000円かかりますが、PDFを編集する際に非常に便利なソフトなので購入をオススメします。
ちなみに、土地家屋調査士の電子署名は5年ごとに更新が必要になります。調査士会からのメールでも案内があるかと思うので、更新を忘れないようにしましょう。
登記申請書、調査報告書への記載
調査報告書の「補足・特記事項」欄に、
「添付した電磁的記録については、当職において添付情報が記載された書面を確認した上で、当該書面をスキャナにより読み取って作成した電磁的記録である。」と記載すること。
申請情報の「その他事項」欄に、
「調査士報告方式により原本提示省略」と記載すること。
合計ファイルサイズ
1件の申請で送信できるファイルの合計容量は15MBまでです。調査報告書に添付する写真を撮影したサイズのまま貼り付けると、データが大きくなってしまうことがあります。書類に合ったサイズに調整しましょう。
調査士報告方式が利用できない申請について
原本提示が省略できる調査士報告方式は、すべての登記で利用できるわけではありません。権利部の登記に変更がでる場合の承諾書などは原本を提示しなければなりません。司法書士は原本提示の省略が許されていないからです。
分筆後の一部の土地について、抵当権を消滅させる場合の消滅承諾書などは原本を提示するようにしましょう。
登録免許税について
完全オンライン申請なので、収入印紙による納付はできなくなります。登録免許税はインターネットバンキングを利用して納付しましょう。業務で利用している銀行がインターネットバンキングに対応しているかどうか確認し、申し込みましょう。申し込みから利用できるまでに1ヶ月近くかかります。
「電子納付による手数料等のお支払いについて」登記・供託オンライン申請システム
ネットバンクはセキュリティー上不安があり、利用したくない場合は、表示される振込先に、ATMから登録免許税を振り込むことも可能です。
登記完了証
調査士報告方式で申請した場合、登記完了証は今までのように登記所で書面を受け取ることはできなくなります。電磁的記録で交付してもらい、印刷し、成果品としましょう。
普通の上白紙に印刷しては見栄えが悪いですから、各調査士会が販売している背景がついた地紋紙に印刷し、表紙をつけましょう。
そして、下記のような奥書を添えましょう。
この登記完了証は、〇〇地方法務局〇〇支局から受信した電子ファイルを印刷したものに相違ありません。
令和○年○月○日 土地家屋調査士○○○○ 職印
少し文字が小さくなってしまいましたが、この商品で奥書スタンプを作ることができました。PDFの編集で上から文字を挿入してもいいと思います。
登記識別情報
登記完了証は電磁的記録のみの交付ですが、登記識別情報は電磁的記録で受け取るか、登記所で書面を受け取るかを選択できます。ただし、郵送による交付は不可となっていますので、郵送で登記識別情報を受け取りたい場合は調査士報告方式は利用しないようにしましょう。
電磁的記録で受け取った場合は、登記完了証と同じように、地紋紙に印刷し、シールを貼って専用の封筒に入れましょう。これもやはり土地家屋調査士会で販売しています。
以上、完全オンライン申請(調査士報告方式)の解説でした。詳細は法務省のホームページで説明されていますので、参考にしてみてください。
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