土地家屋調査士試験のための詳しい勉強時間と勉強法を紹介します。
午前と午後の2部、さらには口述試験からなる国家試験ですが、測量士補取得(測量士、一級建築士、二級建築士でも可)で午前の部の試験は免除されます。土地家屋調査士試験の合格者の99%が午前の部の試験免除者なので、上記の資格を保有していない方は、まず測量士補試験に合格することを目指してください。
それでは土地家屋調査士試験を目指す皆さまへ、少しでも参考となるよう、解説していきます。
目次
土地家屋調査士試験合格に必要な勉強時間
一般的に土地家屋調査士試験は1000~1500時間の勉強が必要だと言われています。この勉強時間の内訳は通信や通学での講義時間120~170時間。過去問などの択一問題60~70回分の解答と間違った問題の論点整理。書式問題過去問や模擬試験含めて全60~70問を5周。以上となります。120~170時間の講義を見終わるのはすぐですが、択一問題を徹底的に理解したり、書式問題を5周解き、身体で作図を覚えるためには、一日最低でも2~3時間の勉強時間を確保しなければ、1年でこのボリュームをこなすことは不可能です。こう聞くと、すごく大変な試験のように感じるかもしれませんが、2、3回過去問を解くと、問題を覚えてしまいますので、勉強時間は過去問を解けば解くほど短くなっていくのが特徴です。
土地家屋調査士試験合格までの平均受験回数
この割合からもわかる通り、2年以内で受かれば勝ち組、3年目で受かればラッキーな試験です。長期戦となる可能性もあるので、モチベーションをうまく保ちながら、確実に基本をおさえてください。ここからは、勉強方法に関して解説していきます。
20問の択一問題が最重要
最も重要なのは、択一問題を1問でも多く正解することです。択一は1問2.5点の配点ですが、記述の場合は1問1点(記述の配点は公表されないため、おおよそ)です。電卓をバチバチ叩いて、ようやく求積する土地の面積よりも、あまり確信を持てていない択一の問題1問のほうが価値はあります。ただし、ここで気をつけなければならないのは、択一の中には考えてもわからないような難問が1、2問紛れている年度があるということ。過去問で見覚えのない択一の問題が本試験で出題された場合には、あまり深追いしないことをおすすめします。
時間配分も大切
試験に挑む際には、以下の時間配分(計150分)で問題を解きましょう。
- 択一(40分)
- 書式の建物(50分)
- 書式の土地(50分)
- 見直し(10分)
ポイントは土地よりも建物が座標の計算がない分、時間通りに解き終わることが多いので、建物の問題を先に解くということです。そして、択一に関しては最初の3問が民法なのですが、問題文が長い傾向にあるので、その他の17問を先に解答し、民法の3問を最後に解くほうが精神的に余裕を持てます。ただし、択一問題の民法を飛ばす際には、くれぐれもマークミスしないように注意してください。
さらに、先にも説明しましたが、択一問題が最重要なので、たとえ予定よりも早い時間で解き終わったとしても、余った時間は最後の見直しの時間に多く当てるようにし、書式の問題に必要以上の時間を使わないように注意しましょう。
正解したとしても、わからない選択肢は徹底的になぜそうなるのかを調べる
さらに、択一問題の正答率をあげる勉強方法を補足します。皆さん、過去問を何度も繰り返し解かれると思うのですが、その際、5択の問題のそれぞれ一つ一つについて理解しているかしていないかを判断し、解答するようにしてください。そして、理解できていない選択肢があった場合は、なぜそうなるのかをテキストや解説などで徹底的に調べ、メモするようにしてください。
この際、東京法経学院では、六法を使って条文を読み込むことを勧められるようですが、LEC東京リーガルマインドの方針では六法を全く使わない勉強スタイルでしたので、私はテキストと過去問の解説のみで論点をすべて理解しました。六法を利用するかどうかはそれぞれで判断してください。もちろん、法律の条文なので無駄な知識には決してならないはずです。
紛らわしい問題はさらに細かいメモを
そして過去問を繰り返していると、紛らわしい問題が増えてきます。表現が似ていたり、暗記する内容が多く、わからなくなる問題です。その場合にも、同じように、なぜそうなるのかを一つ一つ丁寧に噛み砕き、自分の言葉でわかりやすくまとめるクセをつければ、頭の中がスッキリし、記憶の定着がスムーズにいきます。もっとも効率的な勉強方法は、「人に教えること」ですから、未来の自分に向かって、自分の言葉でまとめておくことは、非常に記憶に残りやすい勉強方法だと思います。
書式問題は最低5回、時間内に解く
ここからは書式問題の対策です。最低、5回は過去問を解いてください。この5回というのは、2回目の受験の際にも1年を通して5回書式問題を回すという意味です。2年かけて5周回しても力はつきません。
その際、注意してもらいたいのは、必ず時間を計って問題を解くということです。はじめは制限時間50分でいいですが、繰り返し問題を解いていると、問題の内容を覚えてしまうので、その場合は50分よりも短い時間設定で解くことを心がけましょう。
そして、土地家屋調査士試験は時間との戦いです。土地の座標値を計算し、求積する時間が無かったとしても、作図だけは必ず時間内に終わらせましょう。実際に私も本試験では座標値を間違い、その結果、求積の結果も違っていましたが、作図はできていたため、合格することができました。大抵の問題は、1、2点座標値を計算できなかったとしても、作図は最後までできるように作られています。土地の難しい座標値の計算と求積よりも、先に地積測量図などの図面を完成させるクセをつけておきましょう。
書式の図面解答用紙は購入してもいいかもしれません
過去問は最低5回は解くべきだと紹介しましたが、1年で解くべき書式問題は700問を超えます。それだけの問題用紙と解答用紙を印刷するのは意外と時間がかかるもので、平気で2〜3時間を要します。そこで、問題用紙はしょうがないとしても、解答用紙は購入を勧めます。LECで土地と建物共通の解答用紙が100枚770円で売っていますので、紹介しておきます。
書式図面練習用紙 土地・建物共通(A3版:100枚)
東京法経、LECの答練はできれば毎年購入すること
東京法経学院の受講生は「合格直結答練」、LEC東京リーガルマインド受講生は「コンパクトコースの答練・模試」をできれば毎年購入し、本試験のつもりで問題を解きましょう。決して安い買い物ではありませんが、その年の出題予想が反映された問題構成になっていますので、確実に実力がつきます。答練だけは最新のものを使い、近年の出題傾向に対応できるようにしておきましょう。
東京法経にはたくさんの種類の「合格直結答練」が準備されていますので、迷ったらここで診断しましょう。
試験と同じ状況、小さめの机で問題を解く
これは、私と同じ合格年度の方が実践していて参考になった方法ですが、試験当日は広い机で受験できるとは限りません。大学の教室でよくあるような隣と繋がっているタイプの机の場合は心配いらないのですが、一人に一つずつ配置されているタイプの机の場合は、特に書式の問題を解く際は窮屈です。A3の解答用紙、A4の問題用紙、下書き用の紙、三角定規、電卓、ペン、消しゴム、時計など、机には沢山の物を置かなければなりません。
そこで、この窮屈な状況での解答に慣れるため、私と同じ合格年度の方は、一般的な学校にある机のサイズと同じ板を買い、そこからはみ出さないように問題を解いたとのことでした。試験会場が発表された際には、Googleマップなどで教室内を見れることもあるので、机の形状を確認しておけば安心だと思います。
社会人のための勉強法
これまでは一般的によく言われる試験対策ですが、ここからは私の考える社会人のための試験対策を書いておきます。
合格者の平均年齢
土地家屋調査士試験合格者の平均年齢は毎年、40歳ちょうどです。みなさん、仕事や家庭がある中で受験され、見事に合格しています。
この事実に注目すると、学生時代と同じ勉強方法では失敗するのではないか? ということが言えそうです。
社会人になってからと学生時代とでは記憶力が明らかに違う
実際に私も働きながら、夕食後に2〜3時間勉強する日々が2年半続いたのですが、その中での実感は、学生時代と、社会人になってからでは、記憶の定着が全く違うということです。
集中して聞けば、ある程度のことは暗記できた学生時代から一変し、納得して聞いたはずでもすぐに忘れてしまう今日このごろ。この記憶力の低下には、様々な要因があると思います。飲酒、喫煙、食べすぎ、運動不足などの生活習慣、そして増えすぎた過去の記憶が新しい記憶の定着を阻害していることなどなど。
飲酒や喫煙をやめるなどの生活習慣の改善は、それぞれの考えに任せることにして、私が言いたいのは、加齢により定着しにくくなった記憶を定着させる方法です。
もちろん、いい思い出も、悪い思い出も過去の記憶はすべて自分にとっては大切な記憶ですから、無闇に忘れ去って、勉強した内容を詰め込むためのスペースを確保することはしたくありませんし、できるわけありません。
しかし、そうは言っても、試験にはどうしても受かりたいわけですから、過去の重要ではない記憶を蹴散らすくらいに強いイメージを植え付けて記憶しなければならないわけです。ポイントは以下の3点です。
- これを記憶しなければ自分の生命が脅かされるくらいの意気込みを持って、勉強に取り組むこと。こう言うと、あまりにも大げさで、そんなイメージを抱くことは不可能に思えますが、要するに「退路を断つ」ということです。土地家屋調査士試験の合格が無ければ成立しないような人生設計をし、かなり具体的に開業した時のこと、仕事の方針などを決めておくといいと思います。
- なぜそうなるのかを徹底して深掘りし、五感を使って繰り返し記憶する。これは択一対策の項目でも解説しましたが、その問題がなぜそうなるかを徹底的に噛み砕いて理解するということ。忘れてしまう未来の自分に向けて、自分の言葉でわかりやすくノートを作り、「人に教える」効果を生み出しましょう。
- 復習は1日後、1週間後、2週間後、1ヶ月後(計2ヶ月)が最適だと、脳科学的に研究されています。
まとめ
以上が土地家屋調査士試験の勉強を行う上での注意事項です。この記事を閲覧していただいた受験生の皆さんが1年でも早く合格し、開業、そして活躍されることを願っています。
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